テニス初心者向け|バックハンドスライスの使いわけ完全ガイド
第1章:はじめに 〜スライスは武器になる!〜
テニスを始めたばかりの方にとって、「バックハンドスライス」は少し敷居の高い技術に感じるかもしれません。しかし実は、スライスは初級者だからこそ使いやすく、試合でも効果を発揮してくれるショットです。
トップスピンのショットに比べて、スライスは比較的ラケットの面を安定させやすく、打点も少し後ろでも間に合うため、フォームが安定しない初心者にとって安心できる選択肢になります。
このブログでは、そんなバックハンドスライスについて、「どうやって使い分けたらいいのか?」という視点から詳しく解説していきます。
第2章:バックハンドスライスの基本をおさらい
スライスとトップスピンの違い
まず、バックハンドのスライスとは何かを明確にしておきましょう。スライスは、ラケットの面を上から下に動かして打つことで、ボールに「逆回転(バックスピン)」をかけるショットです。
一方で、トップスピンはラケットを下から上に動かして打ち、ボールに「順回転(トップスピン)」をかけるショットです。
スライスはバウンド後に弾みにくく、低く滑るような軌道になるのが特徴です。相手にとって打ちづらいボールになりやすいため、守りにも攻めにも使える便利なショットです。
スライスのメリット・デメリット
メリット
•弾みにくくて相手が打ちづらい
•タイミングが遅れても対応しやすい
•スピードが遅く、つなぎや粘りに使える
•少ない力で打てるため省エネになる
デメリット
•攻撃力はあまりない(ミスを誘う性質)
•浮いたスライスは打ち込まれやすい
コントロールが不安定になりがち
初心者のうちは、特に「浮いてしまう」ことや「ネットに引っかかる」といったミスが出やすいですが、打ち方のコツを掴めば徐々に安定してきます。
スライスの基本フォームと打ち方
1.スタンス:オープンよりもクローズドに近い方が安定しやすい
2.テイクバック:ラケットを高めに引き、ヘッドが上になるように構える
3.スイング:上から下に向かって滑らかにスイングする(手首の角度をキープ)
4.フォロースルー:打点を前にして、ラケット面を少し開いてボールを押し出すイメージ
最初はゆっくりとしたスピードで、「相手コートに低く滑るボールを送る」ことを意識すると良いです。
第3章:使いわけの考え方 〜状況によって選ぶスライス〜
バックハンドスライスが打てるようになったとしても、「いつ使えばいいの?」という疑問が出てくると思います。スライスは、状況に応じて使い分けることで、その効果が最大限に発揮されます。
状況判断の基準
初心者でも取り入れやすい判断基準は、以下の3つです。
1.時間を稼ぎたいとき:相手の強打に押されて、構える時間がないとき
2.相手のミスを誘いたいとき:リズムを崩したい、低い打点を打たせたいとき
3.自分が苦しい体勢のとき:打点が後ろになってしまったときやバランスを崩したとき
これらの場面では、無理にトップスピンで強く打とうとするよりも、スライスを使ってつなぐことでラリーが安定します。
自分の得意不得意を知る
自分のプレースタイルや苦手意識も、スライスを使う上での判断材料になります。
•バックハンドで強く打つのが苦手 → スライスでつなぐことでミスが減る
•動きながら打つのが苦手 → 止まってスライスを打てば安定する
•相手のスピンボールが苦手 → スライスで返すと相手の回転に飲み込まれにくい
テニスでは「自分を知る」ことがとても大切です。特に初心者は、「できること」と「まだ難しいこと」を明確にして、できることを武器にしていくのが上達の近道です。
第4章:実戦での使いわけパターン
バックハンドスライスは、「どういう場面で打つか」によってその効果が大きく変わります。ここでは初心者が試合やラリーで遭遇しやすい7つのシチュエーションを取り上げ、それぞれに対する使い方を紹介します。
① 相手が強打してきたときの返球
相手のショットが速くて、バック側に打ち込まれたとき、「無理に打ち返そうとしてミスする」ことはよくあります。そんなときは、無理にスピンをかけず、スライスで返球するのが有効です。
ポイント
•スライスで時間を稼ぎ、次の構えを整える
•相手の勢いを利用して、軽く当て返すような感覚で十分
•浮かないように、打点はできるだけ前に
特にリターンが間に合わないときや、体勢が崩れているときはスライスの選択肢を持っておくと安心です。
② ラリーで安全につなぎたいとき
ラリーが長くなってきて、「安定感を優先したい」と感じたとき、スライスは非常に便利です。無理に強く打たず、スライスで相手コートの深いところに送ることで、自分のペースを保つことができます。
ポイント
•ミスしやすいトップスピンを避けて、コートに入れることを優先
•ボールを相手のバック側に集めるとミスを誘いやすい
•弾まない球質が相手のタイミングを崩す
スライスを交えることで、ラリーのテンポが落ち着き、冷静に状況判断ができるようになります。
③ 相手を前に引き出すとき
前後の揺さぶりは、テニスの基本戦術の一つです。スライスは「短いボール(ドロップショット気味)」にも向いており、相手をネット前に引き出したいときに効果的です。
ポイント
•ネットに近い位置で打つと、スライスが短くなりやすい
•打点を前に取り、軽く押し出すように打つとコントロールしやすい
•相手が後ろに下がっているときに使うと特に有効
うまく使えれば、相手を前に走らせてミスを誘ったり、次のチャンスボールを引き出せます。
④ 難しいボールを処理するとき
高く跳ねて打ちづらい、あるいは低く滑って取りにくいなど、「難しいボール」に対しては、スライスでしのぐのが現実的な選択です。
ポイント
•自分のリズムを無理に変えず、確実に返すことを優先
•打点が遅れても、スライスならある程度対応可能
•深く返すことを意識して、相手に簡単に攻めさせない
「スライスで返す」ことで、相手の攻撃リズムを崩すこともできます。
⑤ サーブ&ボレーに対応するリターン
ダブルスでよく見られる「サーブ&ボレー」戦術に対しても、スライスは非常に有効です。ボレーに来る相手の足元にスライスで沈めることで、ミスを誘いやすくなります。
ポイント
•相手の足元に沈むような低いボールを打つ
•浮かせないように注意して、バウンド後に滑るスライスを意識
•サイドに打ち分ける余裕があれば、左右に散らすと効果的
特に女子ダブルスでは、「沈むスライスリターン」がポイントに直結しやすいので、ぜひ覚えておきたい場面です。
⑥ ダブルスでのネットプレー対応
ダブルスのラリー中、ネット際で速いボールが飛び交う場面では、スライスでコントロールすることが重要です。相手前衛のボレーを避けつつ、安全につなぐには、スライスが最適です。
ポイント
•ボールの軌道を低く保ち、相手の打点を下げる
•横に流すようなスライスでネットプレーヤーをかわす
•ミスを減らし、相手のプレーを制限する
特に前衛の動きが鋭い相手に対しては、滑るようなスライスが有効な手段となります。
⑦ 相手のリズムを崩したいとき
テニスはリズムのスポーツです。相手が一定のテンポでスピンボールを打ってくるとき、そこにスライスを混ぜるだけで相手の感覚を狂わせることができます。
ポイント
•トップスピン→スライス→トップスピンと交互に打つ
•弾まないボールを混ぜることで、相手のタイミングを外す
•相手の「得意なリズム」をわざと崩す意識を持つ
たとえ攻撃的なショットでなくても、相手が嫌がるプレーを選択することが、勝利への近道です。
第5章:よくあるミスとその対策
バックハンドスライスを試合やラリーで実際に使ってみると、以下のようなミスが起こりやすくなります。
ミス①:浮いてしまう
初心者にとって最も多いミスが、「スライスがふわっと浮いてしまい、相手に打ち込まれる」パターンです。浮いたスライスはチャンスボールになりやすいため、狙われやすくなります。
原因
•打点が後ろすぎる
•ラケット面が開きすぎている
•スイングスピードが遅すぎる
対策
•打点を身体よりも少し前に取る
•面の角度はやや上向き程度で、開きすぎない
•少し押し出すようにスイングし、低めの軌道を意識
フォームを動画でチェックすると、ラケット面の角度やスイングの軌道が確認しやすくなります。
ミス②:ネットに引っかかる
スライスを打つときにネットミスをすると、「やっぱりスピンの方が安心かも…」と思いがちです。しかし、これはラケット面の角度やボールの当たり方に改善点がある証拠です。
原因
•ラケット面が下を向きすぎている
•打点が低すぎてスイングが窮屈になっている
•ボールを押し出す意識が弱い
対策
•スイングの出だしを少し高めに構える
•ボールの下を少しなぞるようにスイング
•弾道は「低く滑らか」をイメージしつつ、ネットの50cm上を狙う意識
特に「ボールの下にラケットを入れる感覚」を覚えると、ネットミスが減っていきます。
ミス③:コントロールが効かない
スライスを打てても、左右のコントロールが安定しない場合があります。とくに試合になると、狙った方向に飛ばないと焦ってフォームが乱れがちです。
原因
•フォロースルーが不安定
•手首や肘が柔らかすぎてブレている
•スイング軌道が毎回違っている
対策
•フォロースルーは身体の前に収め、毎回同じ位置に止める意識
•手首は固定し、腕全体でスイングする
•コーンやターゲットを置いた狙い打ち練習が効果的
反復練習で「一定の動きの型」を体に覚えさせることが、安定感のカギです。
ミス④:スイングがぎこちなくなる
初心者は「打ち方がぎこちない」と感じることも多く、スライスだけでなく全体のリズムも狂いがちです。
原因
•スイングに力が入りすぎている
•スイングが直線的になってしまっている
•テイクバックが遅れてタイミングが合わない
対策
•脱力を意識し、柔らかくスイングする
•スイングを円を描くような軌道にする
•構えを早めにして、余裕を持って打点に入る
「力を入れない」ことが、逆にしっかりとしたスライスを生むコツです。
第6章:練習方法と上達のコツ
では、実際にスライスの使いわけを身につけるためには、どんな練習をすればよいのでしょうか?ここでは一人でもできる練習から、パートナーとの練習、さらにはコーチとのレッスンで意識すべきポイントまで紹介します。
一人でできる練習
壁打ちスライス
•壁に向かって低い軌道でスライスを打つ
•弾道が浮かないようにコントロールを意識
•壁からの返球を次の打点にうまく合わせる
スイング確認(シャドー練習)
•鏡や動画でフォームをチェックしながら素振
•毎回同じフォーム・フォロースルーを意識
•テイクバックのタイミングと面の向きを固定する
的当て練習
•地面にマーカーや的を置いてそこを狙う
•左右・深さのコントロール力を高める
•弾道を変えずに狙いだけを変える練習をする
パートナーと行う練習
スライスラリー
•お互いにスライスのみでラリーを続ける
•浮かさず、コートの深い位置に打ち合う意識
•試合に近いテンポで実戦感覚を養う
前後の使い分け練習
•深いスライスと浅いスライスを交互に打ち分ける
•相手を動かすイメージで前後に打ち分ける練習
•ラリーの中で実際に使えるスライス感覚を育てる
コーチとのレッスンで意識するポイント
•「このスライスは何の目的で打つのか?」を常に意識
•打ったあとのポジション取りや準備も含めて練習
•スライスを打った後の球出しで展開力を身につける
スライスの練習は、技術だけでなく「使う場面のイメージ」を持って行うことで、格段に効果が上がります。
第7章:心構えとメンタル面
バックハンドスライスを上達させ、試合の中で効果的に使いこなすには、技術面だけでなく「心構え」や「メンタル」の安定もとても重要です。この章では、初心者が自信をもってスライスを使っていくためのヒントをご紹介します。
① スライスに自信を持とう
多くの初心者は「スピンの方が強そう」「スライスは逃げのショット」と思いがちですが、実際にはトップ選手たちもスライスを巧みに使っています。特に女子選手やダブルスでは、戦術の一環として活用されています。
心構えのポイント
•スライスは立派な「攻撃の起点」になる
•安定して返せるだけで試合の流れを変えられる
•相手に嫌がられるショットを使えるのは「武器」になる
「自信を持ってスライスを使っていいんだ」と思えるだけで、プレーが大きく変わります。
② ミスしても落ち込まない
スライスを試合で使い始めると、最初はミスも当然あります。浮いたり、ネットしたり、狙い通りにいかなかったり。しかし、それを「失敗」として捉えるのではなく、「成長の過程」と考えることが大切です。
気持ちの切り替え
•「次はもう少し低く打ってみよう」とポジティブに考える
•スライスを選んだこと自体がチャレンジであり進歩
•ミスを次の成功のヒントに変える
テニスは一発勝負ではありません。使い続けてこそ、スライスの真価が発揮されていきます。
③ スライスを「戦術」として考える
ただスライスを返すだけでなく、「ここでスライスを打てば相手の攻撃が止まる」「ここで沈めれば相手が前に出にくい」など、戦術的に考えるクセをつけましょう。
戦術の例
•相手がバックが苦手 → バック側に滑るスライス
•相手が強打好き → 浮かないスライスでテンポを崩す
•相手が足が遅い → ドロップ気味に前に引き出す
一球一球に「狙い」を持つことで、プレーの質が大きく変わります。
④ スライスを「自分らしい武器」にする
「スライスが得意な人」というのは、それだけで相手にプレッシャーを与える存在です。あなたのプレースタイルに合わせて、スライスを軸にした展開を作っていきましょう。
例
•スライスで粘って、チャンスでフォアで打ち込むスタイル
•深いスライスと浅いドロップを交互に使って揺さぶるスタイル
•ダブルスで沈むスライスを打ち続け、味方をサポートするスタイル
「スライス=自分の強み」という意識がつけば、メンタルも安定していきます。
第8章:まとめと今後のステップ
最後に、本記事全体を振り返りながら、これからスライスを武器にしていくためのステップをまとめましょう。
① バックハンドスライスとは?
•スライスは回転量を抑えた「滑る」ショット
•安定性が高く、相手のミスを誘いやすい
•スピンとは違うリズムで相手を崩せる「変化球」
② スライスの主な使いわけパターン
•強打をしのぐための返球
•ラリー中の安定したつなぎ
•相手を前に引き出すドロップ風スライス
•難しいボールを処理するためのしのぎ
•サーブ&ボレーへのリターン対応
•ダブルスでのネットプレー対策
•相手のリズムを崩す変化球的な使い方
③ 上達のために意識するポイント
•面を安定させて打点を前に
•ネットミスや浮き球を減らすフォームづくり
•コントロール力と安定感を高める反復練習
•スライスを戦術として位置づける意識
④ これからのステップ
1.まずはフォームの安定化
シャドースイングや動画撮影で、毎回同じ動きを習得。
2.ラリーやミニゲームで実戦投入
「浮かせずに返す」「左右にコントロールする」ことを目標に。
3.試合の中で使う場面を増やす
得点につながらなくても、スライスを使う意識を持つ。
4.自信を持って“武器化”する
「この球はスライスでいこう!」と迷いなく選べるようになる。
おわりに
バックハンドスライスは、テニス初心者でもすぐに取り入れられるショットでありながら、上達するにつれてどんどん深みが出る技術です。
地味に見えるかもしれませんが、「試合で勝ちたい」「相手にいやがられたい」「自分のペースでラリーしたい」と思うなら、スライスは間違いなくあなたの強い味方になります。
今すぐに完璧なスライスを打てる必要はありません。大切なのは、「使ってみよう」「練習しよう」という気持ちと、積み重ねです。
ぜひ、今日からスライスをあなたのテニスの中に取り入れて、楽しく・自信を持ってプレーしていきましょう!